知財センター活用事例「株式会社カインドウェア」
能動的に社内媒体を立ち上げて知財についての情報を共有化
創業は1894年。日本にフォーマルの文化を定着させたパイオニアであり、宮内庁御用達としても知られている。
1994年に新しい事業として挑戦したヘルスケア分野でも今では確固たるブランドを築き、機能的でファッション性のあるさまざまなアイテムを取り揃え、多くの人々の暮らしに快適さや豊かさを生み出している。

主な権利
- 2014年:実用新案 第3191038号
- 2020年:実用新案 第3229939号
- 2021年:意匠登録 第1687562号
- 2014年:商標登録 第5720135号
- 2017年:商標登録 第5988627号
会社概要
- 所在地:東京都港区虎ノ門5-12-1-7
- 電話:03-3864-2817
- URL:https://thekindware.com
- 業種:アパレル、ヘルスケア、ロジスティクス、ファブリックなど
- 設立:1894年(明治27年)
- 資本金:1億円

洋装文化の発展に貢献し介護分野でもブランドを構築

フォーマルウェア、スーツなどを展開している。
「人生を、輝かしく、上質に」それが、株式会社カインドウェアのミッションだ。会社の歴史は長く、明治時代に日本の西洋化を見越して起業。テーラーのパイオニアとして日本の洋装文化の発展に貢献し、戦後すぐにはフォーマルの新様式であるダブルの略礼服を考案してこの国に根付かせた。品質の高いブランドとして知られ、昭和から平成への皇室儀礼では宮内庁にも納品した。
そしてまさに創業100年という転機となる1994年には、次の100年に向けた新事業としてヘルスケアブランドを立ち上げ、さまざまなアイテムやファッションを生み出した。常にチャレンジし続け、変革を重ねながら歩み続けるのが、同社のスタイルであり背筋となっている。一人ひとりのライフストーリーを見つめ輝かせるブランドとして、アパレルの世界でも、ヘルスケアの世界でも、そこにはカインドウェアがある。

フォーマルウェア、スーツなどを展開している。
秘書としてトップの身近で知財への情熱を感じる
社長室秘書であり知財管理担当の荻野さんはこう語る。「私は4年前に入社して秘書を担当し、1年ほど後に知財管理担当の前任者から業務を引き継ぎました。それで、スタートしていた知財センターのニッチトップ育成支援も引き継ぐことになりました。私は未経験で一から学ぶ状態でしたが、知財センターのアドバイザーには根気強く並走してもらいました」
さらにこう続けた。「アパレルの世界では流行り廃りもありますから、ヒット商品が生まれると他がそれを真似するようなことは常にあります。ですから当社は以前から知財には熱を持って取り組んでいますし、さらに力を入れていきたいというトップの熱い想いを、身近にいる秘書でもあるからこそ聞くことができます」
秘書と知財管理の兼任は珍しいことかもしれないが、トップ直属のポジションで担当することは理にかなっているのかもしれない。
オーダーメイドのプログラムで支援を受ける
ニッチトップ育成支援について、さらに感想を尋ねた。「プログラムはオーダーメイドのような形で、やりたいこと、必要なことをその都度付け足してもらいながら進めました。知財センターのアドバイザーには、当社にとってどんな内容が最適かを一緒に考えてもらいました。柔軟な対応でしたから、いろんなことができたと感じています」
さらにこう続ける。「今までは知財化の手続きの流れはできていましたが、職務発明規程のような社内制度は整っていませんでした。ですから、今回の支援で整備できたことは、会社にとって大きな力になりました。当社はオーナー企業でもありますが、そうした会社の承認フローなどの特性を加味したアドバイスももらいました」
職務発明規程の整備後に早速実践ケースが生まれる
支援期間中の2021年には、ヘルスケア用品の杖の先端に付く杖先ゴムの意匠登録も行った。「ゴム製造会社との共同出願でしたが、整備された職務発明規程に早速則って、スムーズに行うことができました。この時も知財センターのアドバイザーに相談しながら具体的なスケジュールを組んで進め、迅速にゴールへ向かうことができたと思います」
また、助成金の存在について知ることができたのも大きな収穫だったと言う。「当社のように知財になかなか予算を割くことのできない中小企業でも、出願費用の助成が受けられることを教えてもらいました。また、知財センターに相談窓口があり、ちょっとした困りごとについても受け入れてもらえることで、肖像権や類似商品のことなど、さまざまな相談を行いました」

エイジレス、ジェンダーレスな機能性とファッション性を掛け合わせたケア商品を幅広く取り揃え、プレゼントにも喜ばれている。
オープンにできる社内情報は知財でも「透明性」を確保


伝統と格式を誇る系譜とともに歩んでいる。
グローバル企業になる目標を掲げて、同社は本社を2022年4月に、神田から神谷町駅に近い虎ノ門のワンフロアに移転した。オフィスはオープンな設えで透明性が高く、社員同士で情報を共有しながら迅速な意思決定を可能にしている。知財においても社内でオープンにすべき情報を切り分けて、「透明性」を確保しながら伝えていると荻野さんは語る。
秘書という役職には、一般的には秘めたる業務を行うというイメージもあるだろうが、荻野さんはそんな秘書像を新たに進化させ、知財の知識などを社員に積極的に伝える活動も行っている。まるで「二刀流秘書」といったところである。
「ニッチトップ育成支援のおかげで、能動的に考えて行動できるようになりました。自分だけが理解しているのではなく、知財の知識を社内に浸透させていくことが大切。そこで2023年から『ジャーナル』という情報媒体を立ち上げ、毎月社内ネットワークに載せています。知財の枠組みの説明から始まり、事例紹介などの記事も掲載し、より身近に感じてもらえるコンテンツになるように工夫しています。情報の取り扱いについて事例から学んで危機感を持ってもらうことも大切だと思い、訴訟などのケースについても紹介しています」
これからについては「従業員が分からないことは丁寧に説明しフォローしていく知財管理部門でありたい」と語る荻野さん。老舗と呼ばれる会社であるからこそ、権利関係や著作物などには今後も細心の注意を払っていきたいという。KIND…優しさの本質は、荻野さんのまなざしの奥にある輝きからも十分に感じられた。

伝統と格式を誇る系譜とともに歩んでいる。
知財センターからのメッセージ
肖像権や著作権、共同出願契約のルールづくりも
ニッチトップ育成支援により、職務発明規程の制定、職務著作規程の整備など、知財関連の規程類の制定が完了しました。また、社内で必要としていた肖像権や著作権、さらには共同出願契約に関するルールづくりも完了。今後はこうしたベースに基づいて知財活動を行い、ますます伸びていく会社であると感じています。
担当:星アドバイザー
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