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知財センター活用事例「株式会社エンファシス」

特許を考えることで今までは見えなかった市場が見えてくる

家電や車載情報機器などに搭載される組込みソフトウェアの受託開発を行い、AV機器関連技術をさらに伸ばしながら業務系アプリ開発、ITインフラ関連業務なども行っている。
また近年では画像処理機器に関する企画開発部門を立ち上げ、視線の向きなどで操作する「アイスイッチ」という自社製品をリリースするなど、福祉分野にも大きく貢献している。

代表取締役社長:有田 邦朗さん(左) 企画開発部 主任研究員:大島 佑介さん(右)
代表取締役社長:有田 邦朗さん(左)
企画開発部 主任研究員:大島 佑介さん(右)

主な権利

  • 2015年:特許 第6214047
  • 2023年:特許 第7422371号
  •    (株式会社アレックス)

  • 2016年:商標登録 第5904012号
  • 2022年:商標登録 第6566660号

会社概要

  • 所在地:東京都豊島区西池袋5-8-7 深野ビル
  • 電話:03-6410-7571
  • URL:https://www.emfasys.co.jp
  • 業種:組込みソフトウェアの研究・設計・開発など
  • 設立:2003年(平成15年)
  • 資本金:3,000万円

代表取締役社長:有田 邦朗さん(左) 企画開発部 主任研究員:大島 佑介さん(右)
代表取締役社長:有田 邦朗さん(左)
企画開発部 主任研究員:大島 佑介さん(右)

難病を抱えている人にとって少しでも役に立ちたい

 デジタルカメラやDVD/BDプレーヤーなどの家電製品、カーオーディオやカーナビなどの車載機器関連など、組込みソフトウェアの受託開発において多くの産業に貢献してきた株式会社エンファシス。得意とする組込み処理技術や画像処理技術を生かして、福祉分野向けの画像処理機器として開発したのが「アイスイッチ」という自社製品だ。
 有田社長は次のように熱く語った。「この製品は、ALSという筋萎縮性側索硬化症など、四肢の不自由な方が視線やまぶたの動きでナースコールなどの外部機器を操作できる初めてのスイッチです。こうした難病を抱えている人が身近にいたこともあり、簡単に意思伝達を行えるようにするために、なんとか少しでも役に立ちたいという想いを抱いていました。最初は自前で開発していましたが、途中からNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けるようになります。そうした頃から改めて他社の特許に抵触していないかなど、知的財産権を強く意識するようになりました」

「アイスイッチ」は視線やまぶたの動きだけで、さまざまな機器を操作することができる。
「アイスイッチ」は視線やまぶたの動きだけで、さまざまな機器を操作することができる。

発明発掘に取り組む中で新しいアイデアが生まれる

「アイスイッチ」には福祉分野だけではなく、医療関連、車載関連、カメラ関連など多くの分野に貢献する可能性が秘められている。
「アイスイッチ」には福祉分野だけではなく、医療関連、車載関連、カメラ関連など多くの分野に貢献する可能性が秘められている。

 そして知財の重要性を再認識したことにより、2021年から知財センターのニッチトップ育成支援別タブで開くを受ける。さまざまなテーマに取り組んだが、具体的に特許の出願を検討して手続きを行う準備まで進めた事案があったため、より深い知識が得られたという。企画開発部の主任研究員である大島氏は「今まではどのようなアイデアが特許につながるのか、なかなかピンときませんでした。この程度のことでは特許にはならないだろうという思い込みがあったのも事実です。そこのポイントをアドバイスしてもらったことは大きかったです。また、発明発掘に取り組む中で新しいアイデアが生まれ、そこから新製品の機能開発につながることもありました。新鮮な気持ちで取り組めたことは印象深いです。とりあえずは発明発掘にトライしてみること、ちょっと視点をずらして物事を見てみることが大事だと身をもって感じました」と語る。

「アイスイッチ」には福祉分野だけではなく、医療関連、車載関連、カメラ関連など多くの分野に貢献する可能性が秘められている。
「アイスイッチ」には福祉分野だけではなく、医療関連、車載関連、カメラ関連など多くの分野に貢献する可能性が秘められている。

ビジネスの各チャネルに知財から派生するものがある

 ニッチトップ育成支援では人材育成を第一に、新入社員を中心として知財入門セミナー、エンジニアに対する特許セミナーが定期的に実施された。大島氏は、「セミナーに参加した社員からは、今まで知財との距離があったけれど、少し近づいた雰囲気が感じ取れます」と語る。
 また、職務発明規程、営業秘密管理規程など、知財管理体制の基礎も構築された。「アドバイスのおかげで、商標ならば自分たちで出願できるようにもなりました」と有田社長。さらに特許や知財についての想いを、こんな深い言葉で語られた。「技術を守りたいから特許を取得するということではあるでしょうけれど、また別の視点からすると特許を考えることによって今までは見えていなかった市場が見えてくると思います。私たちの固くなっている了見のようなものを少しずつ氷解させながら、知見が広がっていくように感じるのです。そういう部分でも知財に取り組むことはとても勉強になると思いますし、ビジネスのカテゴリーを越えた想いもそれぞれに広がっていくでしょう。ビジネスのいろんなチャネルに派生していくものが知財にはありますから、これからもそうした効果を期待したいですね」

特許の侵害を疑われたが適切な対処によって封じる

 2021年5月には、音声処理技術のプロフェッショナルとしてプロダクト開発などを行っている株式会社アレックスを、M&Aによって関連会社とした。このことから、映像系のエンファシスと音響系のアレックスという事業の相乗効果が生まれようとしている。有田社長は「『アイスイッチ』に発話による音声の仕組みを取り入れたいという想いもありました。アレックスに関してはちょうど支援期間中にいろいろなことがあって、他社から『特許を侵害しているのでは?』と言われたこともありました。結局はこちらが侵害していない根拠を提示して解決しましたが、営業妨害のようなこともあって大変でした。この件でも知財センターからはさまざまなアドバイスをもらったことで助かりました」と語る。アレックスにおいても引き続き知財センターの支援を受けており、知財への取り組みがグループ全体で進んでいる。

できなかったことができる喜びを広げていきたい

「アイスイッチ」を利用すれば、コール機器・環境制御装置・意思伝達装置を介して、呼び出し・家電操作・コミュニケーションなどを行うことができる。
「アイスイッチ」を利用すれば、コール機器・環境制御装置・意思伝達装置を介して、呼び出し・家電操作・コミュニケーションなどを行うことができる。

 「アイスイッチ」は福祉分野だけに留まらず、産業分野や医療分野でもその可能性を広げようとしている。「例えば、両手がふさがっている時に他の操作をしたい、第三の手を使いたいということがありますよね。そうした時に工場のラインでも手術の現場でもハンズフリーで操作できますから、さまざまな社会課題の解決につながるかもしれません」と有田社長。そんな「アイスイッチ」には「できなかったことができる喜びを。」という夢のあるキャッチフレーズが付けられている。
 福祉分野では、視覚障がい者向けの新たな製品開発も進めようとしている。必要とされている方に、必要な技術を。さまざまな人々に対する優しいまなざしを持ちながら、エンファシスとアレックスの挑戦は続いていく。

「アイスイッチ」を利用すれば、コール機器・環境制御装置・意思伝達装置を介して、呼び出し・家電操作・コミュニケーションなどを行うことができる。
「アイスイッチ」を利用すれば、コール機器・環境制御装置・意思伝達装置を介して、呼び出し・家電操作・コミュニケーションなどを行うことができる。

知財センターからのメッセージ

学びを活かして発明発掘などに取り組んでほしい

ニッチトップ育成支援を通して、どのような考え方をすれば特許になるかの大筋を伝えることができたと思います。今後の新製品開発においては、自ら発明発掘にチャレンジしてもらいたいと思います。また、知財管理体制の基礎を構築できたと思われますから、今後の会社経営に知財を積極的に活用できることを期待しています。
担当:西郷アドバイザー

ご活用いただいた支援メニューのご紹介

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