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知財センター活用事例「福永紙工株式会社」

紙と電子の二刀流によって知財管理がさらにパワーアップ

印刷・加工の会社というイメージから、近年では面白いアイデアが湧き出てくる、オリジナリティ豊かでクリエイティブな会社としてのイメージが定着してきている。
最近では紙の構造設計の専門家によるコンサルティング・チーム「UNBOX(アンボックス)」を立ち上げるなど、その創造力・好奇心・可能性はさらなる広がりを見せている。

代表取締役:山田 明良さん(左)設計製作部 構造設計士:宮田 泰地さん(右)
代表取締役:山田 明良さん(左)
設計製作部 構造設計士:宮田 泰地さん(右)

主な権利

  • 2022年:意匠登録 第1714516号
  • 2022年:意匠登録 第1714517号
  • 2022年:意匠登録 第1729356号
  • 2021年:商標登録 第6370990号
  • 2022年:商標登録 第6656615号

会社概要

  • 所在地:東京都立川市錦町6-10-4
  • 電話:042-523-1515
  • URL:https://fukunaga-print.co.jp
  • 業種:パルプ・紙・紙加工品製造業
  • 設立:1963年(昭和38年)
  • 資本金:4,800万円

代表取締役:山田 明良さん(左)設計製作部 構造設計士:宮田 泰地さん(右)
代表取締役:山田 明良さん(左)
設計製作部 構造設計士:宮田 泰地さん(右)

委託契約の見直しをするなど営業の意識改革にもつながる

 2019年9月の取材で、当時の知財別タブで開くへの取り組みを紹介した、福永紙工株式会社。2006年頃からのデザインプロジェクトも着々と進み、会社の成長発展とともに知財への取り組みもさらに次の段階へと進んでいる。2021年からは知財センターによるニッチトップ育成支援別タブで開くを受けた。
 知財の担当者は現在もディレクターの宮田氏である。宮田氏はニッチトップ育成支援について「営業職などもさまざまな会社と秘密保持契約など知財に関わるやり取りを行いますし、直接担当している私だけではなく、社内全体で知財への意識を高めようと考えました。今回の支援によって、協力会社との委託契約の内容を見直すなど、より積極的な動きにもつながりました。営業職の意識も大きく変わったと思います」と語った。

電子出願にも合わせた形で進化した知財管理を推進

 これに続いて山田社長は「これまで知財センターからは意匠や商標に関することを中心にアドバイスをもらってきました。ただ、最近は当社が実績を積んできたこともあって、クライアントの下請けではない言わばフラットな関係になってきています。大企業との取引も増えて、契約内容が厳しく見られるようになったこともあり、そうした流れにも合わせて契約関係でも適切なアドバイスをもらうようになりました」と語る。
 そして「最近は宮田ファイルもまた、すごいですよ」とうれしそうに語る山田社長。2019年の取材時には知財管理のオリジナルファイルを紹介してもらったが、それが一段と進化しているという。宮田氏はこう語った。「3年ほど前から電子出願も行うようになり、あまり紙が残らなくなりました。以前は書類をすべて取っておきましたが、登録した内容はWEBでも見ることができますし、以前のように案件ごとのファイルにはしていません。意匠や商標に関して、継続して登録中のものと、権利は切れているけれども過去に登録していたもの。そうしたファイル分けをしています。定期的に一覧を更新して現状を把握できるようにしていますから、もし誰か他の人に知財管理を引き継ぐ場合でも安心できると思います。また、特許(登録)料支払期限通知サービスというものがあることを教えてもらい、そんなサービスも便利に活用しています」
 よりパワーアップした知財管理は、紙と電子の二刀流。しかも、管理する自身の都合だけを考えているのではない。いつでも後継者を想定した分かりやすい仕組みにしているのは頼もしい限りである。

知財学習による足場固めとメディアへのアピールが大切

 山田社長は「いろんな人の助けを借りながらも、大きな問題もなく今まで来ているのは素晴らしいことだと思います。小さい会社ですが世界中に商品を出し、大手企業との取り組みも進めている。そうした中で、知財に関してはいろんな形で抑止力が働くなど、未然にリスクを防いでいる面もあると思います。もしここまで知財に取り組んでいなければ、トラブルで大変な思いをしているかもしれませんね。知財を学んでしっかり足場を固めること。そしてメディアに出して知ってもらうこと。この2つが重要だと思います」と語る。さらに宮田氏は「新たなデザインの構造を見つける機会は日々かなりありますが、それを一つひとつ権利化するのは大変ですし、お金も間に合いません。それでも『ここぞ』というものを押さえることと、お披露目の際にしっかりメディアに載せてもらえるようにすること。そうすれば『当社が最初ですよ』というアピールにもなりますから、リリースにも力を入れています」と続けた。

箱を再発明する取り組み「UNBOX」。多彩なメーカーやクリエイターとのコラボレーションを通じて、梱包材も含めた新しいパッケージのあり方を世に問い、豊かな体験を生み出していくプロジェクトである。
箱を再発明する取り組み「UNBOX」。多彩なメーカーやクリエイターとのコラボレーションを通じて、梱包材も含めた新しいパッケージのあり方を世に問い、豊かな体験を生み出していくプロジェクトである。
「UNBOX」の成果物の一つ、折り目がないのに畳める紙袋。「箱と袋のはざま」というテーマで、「箱」と「袋」が果たす役割や機能を細やかに考察し、見事に分解・統合した。美しいデザインであり、過剰包装の問題にも一石を投じている。
「UNBOX」の成果物の一つ、折り目がないのに畳める紙袋。「箱と袋のはざま」というテーマで、「箱」と「袋」が果たす役割や機能を細やかに考察し、見事に分解・統合した。美しいデザインであり、過剰包装の問題にも一石を投じている。

AIに合わせた法整備のように今後の知財の変化もイメージ

 改めてニッチトップ育成支援について尋ねると「セミナーでは海外のことも取り上げてもらいました。ちょうど韓国の企業とも取引していたので、社員たちには良かったと思います。事前に知財や契約について知っていると、慌てずに交渉できますしね」と山田社長。今後の知財への取り組みについては「せっかく多くのことを教えてもらったので、今後も継続していきたいです。また、最近想像しているのは、構造などでも『コンセプトやアイデアなどの考え方に関する権利』が今後生じる可能性はないかなと。開拓者としてその権利をある程度コントロールしながらオープンソース的に社会に広げ、世の中をちょっと良くするにはどうすべきか。AIの進化に合わせて法整備も変わるように、知財の落としどころも変わっていくかもしれませんね」と語った。

固定観念を打ち破っていくセンスある反射神経

 歩みを進める福永紙工。2024年5月には立川市の本社敷地内に「SUPER PAPERMARKET(スーパーペーパーマーケット)」がオープンした。「ファクトリーショップみたいな形で、フラッグシップ的な役割を果たしたい。多くの人に気軽に訪れてほしいです」と山田社長はアピールする。
 福永紙工の経営ビジョンにもつながるキーワードを尋ねたところ「センスある反射神経」と答えた山田社長。会社の固定した理念やビジョンを掲げていない理由としては「掲げても半年で古くなったり、それが足かせになってもいけませんからね」と語る。固定観念に縛られず、軽やかである。進化しながら歩み続けられる理由の一つであろう。これからもっと多くの人を楽しませながら、新たな提案を世の中に発信し続けていく。

本社敷地内に移転・リニューアルオープンした「SUPER PAPER MARKET」、略して「SPM」。オリジナル製品をはじめ紙をテーマにセレクトしたアイテムが並ぶほか、ギャラリーとティースタンドを併設している。
本社敷地内に移転・リニューアルオープンした「SUPER PAPER MARKET」、略して「SPM」。オリジナル製品をはじめ紙をテーマにセレクトしたアイテムが並ぶほか、ギャラリーとティースタンドを併設している。
クリエイター石川将也、サービスプロデューサー吉田一穂との協働プロジェクトである新しい科学玩具「マグネタクト アニマル」の工作キット。磁石の研究から生まれた生き物たちが楽しくパタパタ動く。
クリエイター石川将也、サービスプロデューサー吉田一穂との協働プロジェクトである新しい科学玩具「マグネタクト アニマル」の工作キット。磁石の研究から生まれた生き物たちが楽しくパタパタ動く。

知財センターからのメッセージ

自社の技術を守るための契約締結なども重要

以前から意匠・商標・著作権などについて高い見識を有する権利意識の高い会社です。大手企業などとの取引もあり、自社の技術を守るためにNDAをはじめとした契約やその条件設定なども重要になってきています。そうした点についても会社全体で意識を高めながらビジネスを進めることが、今後も大切な取り組みとなるでしょう。
担当:琴寄アドバイザー

ご活用いただいた支援メニューのご紹介

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