知財センター活用事例「株式会社アールシーコア」
事業を守り広げていくために知財を活用するというイメージ
ログハウスをはじめとした「BESSの家」でも知られる「自然派個性住宅」の企画・製造・販売などを行う会社。
卓越したデザイン力で確固たるブランドを構築している。
建物だけではなくライフスタイル全体を提案し続け、「梺ぐらし」というココロのぜいたくを大切にする暮らし方を提唱するなど、新たな取り組みも広がっている。

事業サポート部 主任:阿久津 沙文さん(右)
主な権利
- 2022年:特許 第7169690号
- 2023年:意匠登録 第1740619号
- 2024年:意匠登録 第1767191号
- 2022年:商標登録 第6506768号
- 2024年:商標登録 第6796843号
会社概要
- 所在地:東京都渋谷区猿楽町10-1 マンサード代官山6F
- 電話:03-5990-4070
- URL:https://www.rccore.co.jp
- 業種:自然派個性住宅の企画・製造・販売など
- 設立:1985年(昭和60年)
- 資本金:6億7,185万円

事業サポート部 主任:阿久津 沙文さん(右)
組立家屋意匠権侵害事件で業界に知財の大切さを広げる

「家とは暮らしに新しい価値を生み出す装置」という発想から生まれた、新しい住宅カテゴリーを提案する画期的な商品である。
ログハウスと聞いて、BESSというブランドを思い浮かべる人も多いだろう。株式会社アールシーコアは、「住む」より「楽しむ」、「家は暮らしを楽しむ道具」など、住まいや暮らしについて考える数々のオリジナリティあふれる言葉も発信し続けている。BESS事業のブランドメッセージである「こころを遊ばせてください」も、同社の感性がうかがえる素敵なメッセージだ。
知財について深く考えるようになったのは、過去にさまざまな経緯があったから。まず2005年にデザインを模倣される事件があり、和解決着はしたがここから意匠出願を本格的に開始するようになった。また、これを機に特許の出願件数も増加した。2014年には不競法にまつわる問題が起こり、ビジネス保護のためにより戦略的な権利化を行うようになった。そして2020年には組立家屋の意匠権が侵害される事件が起こる。この事件では裁判所で主張が認められて、住宅デザインの法的保護が明確となった。これはインパクトのある事件として反響を呼び、メディアなどでも取り上げられ、住宅業界全体において知財の意識を高める大きな一歩となった。この件について、事業サポート部 知財・法務リーダーの勝間さんはこう語る。「当社の意匠権を侵害する商品がユーザーからの問い合わせによって見つかり、販売差し止めと損害賠償が認められました。それまでは住宅のデザインを保護する権利がそれほど明確ではありませんでしたから、この件が果たした役割は大きかったですね。裁判の後は模倣が激減し、多くの工務店も模倣はダメという意識に変わってきたと思います」

「家とは暮らしに新しい価値を生み出す装置」という発想から生まれた、新しい住宅カテゴリーを提案する画期的な商品である。
ニッチトップ育成支援が一から勉強する好機になる
知財センターの活用は、以前から知財を担当していたもう一人のメンバーが支援機関について調べるところからスタートした。現在、知財については3名体制。主任の阿久津さんは、同社に入社してからのさまざまな経験を活かせる知財担当になることを自ら希望した。「面白そうだと思いましたが知財の知識はなかったので、知財センターのニッチトップ育成支援も含めて一から勉強しました。おかげさまで今では意匠の出願の図面を自分で作れるようにもなりました」。知的財産交流・研究会に参加し、他の会社における職務発明規程や報奨金の話などを聞けたのも貴重な経験だったと言う。
意匠や商標だけではなく特許も自社で出願して取得

楽しく機能的な造作物。特許権、意匠権、商標権を組み
合わせて保護している。
ニッチトップ育成支援では、かなり多岐にわたってサポートが行われたと語る勝間さん。「ブランディング部に向けて商標のセミナーを開催してもらい、どういう点に気をつけるべきか、どんなルールを制定したらよいかなどをレクチャーしてもらいました。大手企業との契約についてもアドバイスしてもらいましたし、支援期間中にはこれまで自社出願していた意匠や商標だけではなく、特許に関しても自力で出願して無事に登録されるという成果も得ました」
また、同社の知財に対する取り組みはWIPO(世界知的所有権機関)が提供する知財活用事例のデータベースである「IP Advantage」に日本の事例の一つとして選ばれ、多面的な権利取得の推進や権利活用の実例が示され、知財活用に対する企業姿勢がアピールされた。

楽しく機能的な造作物。特許権、意匠権、商標権を組み
合わせて保護している。
「攻めの知財」で特にB to Bの可能性を広げていく
今後の知財への取り組みについて、勝間さんは、独自の見解を丁寧に語った。「知財のサイクルは創造、保護、活用ということかと思いますが、特に知財を一つの手段として活用することを『攻めの知財』と呼んでいます。私が思うのはあくまでも事業が起点であって、事業を作り、その事業を守るために知財を取得して、事業を広げるために知財を活用するというイメージです。積極的に自社のアピールに使うことで、競争優位性があるという説得力にもなります。特にB to Cよりも、他社と一緒にやっていくB to Bの方が重要になってくるでしょう。もし当社以外にも同じことができるとしたら価格競争になってしまいますし、知財権を保有することは当社にしかできないという説得材料になります。そこは今後、より強化していきたいですね」
異なる新しいものを生み出す価値観を大切にしていきたい
最後にこれから大切にしていきたいことについてお二人に尋ねた。勝間さんは「ブランドというものは、私たちの会社というよりもユーザーやファンという周りの方々に作り上げてもらっていると思っています。それを大切にしていきたい。ブランドの信用を裏切らないように歩んでいきたいです」と力強く語る。
阿久津さんは「私がこの会社に感じるのは、他と同じではなく、異なる新しいものを生み出したいという価値観の人が集まっていること。それはどんな会社でも必要なことかもしれませんが、特にそのような想いの強い会社です。私はその想いをブランドとして守っていけるように努力したい。そのためにも知財は重要ではないでしょうか」と朗らかに語った。
オリジナリティあふれる会社であることは、それぞれの発する言葉からもよく伝わってくる。ブランドに対するファンが多い理由の一つには、それを大切に守ろうとする会社としての不断の営みがあるのだろう。

ともにある、新しい暮らし方が多くの人に支持されている。

住まい。まぬけは、愛だ。そう語って、「間」のしつらえと「貫け」のおおら
かさのある「ハコ」空間の愉しさを届けている。
知財センターからのメッセージ
信用力・ブランド力の向上のためにも知財が大切
ビジネス競争力の源泉である知財を強化するために、知財の取得の仕方や契約など実践的な内容の習得、ビジネスと連動し知財による信用力・ブランド力の向上につなげる、を主なテーマにニッチトップ育成支援を行いました。今後も明確でユニークな事業方針を踏まえた、知財強化への取り組みがより重要となってくるでしょう。
担当:琴寄アドバイザー
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