知財センター活用事例「株式会社印南製作所」
「一世紀事業所」につなげるためにも知財に継続して取り組みたい
「便利」を作り続けている省力化機械メーカー。さまざまな商品の包装・梱包のプロフェッショナルとして専用機械を製造・販売。通販・物流のスムーズ化などで大きく社会に貢献している。また、開発力が高く顧客からの難しい注文にも知恵を絞って対応することから「断らない印南」の合言葉が生まれている。

常務取締役:藤村 賢司さん(左)
主な権利
- 2023年:特許 第7373881号
- 2024年:特許出願 2024-101586号
- 2011年:商標登録 第5405503号
- 2024年:商標出願 2024-004015号
- 2024年:商標出願 2024-004016号
会社概要
- 所在地:東京都足立区宮城1-12-22
- 電話:03-3912-2976
- URL:https://www.innami-factory.co.jp
- 業種:包装機械や自動梱包装置など省力化機械製造
- 設立:1962年(昭和37年)
- 資本金:1,000万円

常務取締役:藤村 賢司さん(左)
「包装から梱包へ」の時代に権利化によって技術を守る

オンラインショッピングなど通販が当たり前の時代になり、それに伴う発送・物流を支える梱包の重要度も増している。そうした社会を支える役割を果たし、注目されているのが株式会社印南製作所だ。メール便用自動梱包機エコメールパックや、最近では「Rola(ローラ)」という薄箱自動梱包機が、令和のEC業界に革命をもたらすとして話題になっている。
元々、主力として取り扱っていたのは包装機械である。このことについて印南社長から分かりやすい解説があった。「包装は商品を包むもので、衛生的であるなどの付加価値が必要となります。梱包はそうした商品を箱詰めなどして物流に乗せるもの。これまではそんなに付加価値が高くなかったため、大量発送でも人海戦術が主な手段でした。ところが今の時代はEC市場が伸び、梱包品の物流がものすごい勢いで伸びている。それなのに労働力不足の問題もあり、人海戦術だけでは間に合わなくなります。そこで梱包機械のニーズが高まりつつある端境期にあって、包装機械メーカーが梱包機械に手を付けつつある。なぜなら人口減少によって商品そのものの数がなだらかに減ると、包装需要も減速が始まると予測されるからです。当社は以前から梱包機械も手掛けていましたから、後にお話しするニッチトップ育成支援を通して、私たちが実現した技術に関して知財で押さえられるところはぜひ押さえたいと考えるようになりました。『包装から梱包へ』というムーブメントの中でいち早く着眼していたものを守り抜き、今後も継続して提供したいという想いがあったのです」
知財活動の重要性を十二分に認識できた3年間
そうした業界的な背景もある中で、同社は経済産業省関東経済産業局による令和2年度の「チーム伴走型知財経営モデル支援事業」に選ばれてサポートを受けた。この事業は中小企業各社の抱える経営課題に合わせて構成された専門家チームが、知財経営の伴走支援を行うもの。そのプログラムが終了し、さらに継続して知財に取り組んでみないかという紹介があり、知財センターによるニッチトップ育成支援を受けることになった。
印南社長は「ニッチトップ育成支援は今後の事業活動の布石にもなり、知財活動の重要性を十二分に認識できた3年間でした。抽象論ではなく、より当社の実務に沿った視点で支援してもらったというのが率直な感想です」と振り返る。
一品料理の提供の先に見た知財を押さえておく必要性
印南社長はさらにこう続けた。「それまで私たちは、他社の動向や、どういうものが知財に値するか、さらには特許や意匠や実用新案の区分などを明確には理解していなかったんです。なぜかというと、当社が一大ヒット商品を扱っていなかったから。顧客の要望に応えて製品開発を続けてきましたから、言わば一品料理を提供するような形で生き残ってきた会社です。ですから、知財を押さえておく必要があるような切羽詰まった状況ではなかったとも言えます。しかしながら今後新たな製品開発を行った際に、知財に関する知識がないと他社に勝てなくなるかもしれない。そんなことに気付いただけでも良かったですね」
支援期間中には、自社初となる特許出願によって「Rola」に使われている封函技術を登録させるという成果も得た。「ほんの数ヵ月でかなりスピーディーに登録されましたから、製品のリリースも早くできました」と微笑む印南社長。他の権利化にも引き続き取り組んでいるところだ。


ちょうど良い支援期間で点と点が線としてつながる
ニッチトップ育成支援のプログラムには開発事業部の設計者たちも参加して学んだ。「社員は最初はピンとこなかったかもしれませんが、現実的に着実に権利化が進む過程も体感することで、自身のこととして分かり始めたかもしれません」
藤村常務は「最初は知財用語が全然分からなかったのですが、粘り強く教えてもらいました。それからさまざまな事例について、さらには競合するメーカーの話題など現実的な内容になるにつれて、よく理解できるようになりました。もしかしたら3年という支援期間がちょうど良かったかもしれません」と語り、印南社長は「最初の頃は知識としての点と点が結び付かなかったのが、中間を越えたくらいから線で結び付くようになりましたね」と続けた。
「便利になった」と言われると大きな達成感に満たされる

印南製作所の企業CMには「便利を作るのは難しい。便利を作り続けるのはもっと難しい」というナレーションがある。印南社長はこの継続することへの想いを「一世紀事業所」という言葉に込めている。「あと30数年で到達する『一世紀事業所』を目指していますが、そこに結び付けるためには技術を模倣されないようにすることも必要でしょう。そして今まで世の中になかったものを途中で投げ出さずに作り続けることが、最終的にユーザーさんが希望する省力化につながって『便利になりましたよ』と言われると私たちの大きな達成感になります」
風呂敷に包んだものをお渡しするという日本人特有の「包んで、装う」という文化や精神も大切だと語った印南社長。そんな同社の努力の結晶である技術が知財に包まれ、明日に渡されようとしている。

知財センターからのメッセージ
事業遂行のための継続的な知財活動がスタート
「事業を恙なく遂行させるために知財活動を行うのだ」という方針の元に、ニッチトップ育成支援に積極的に取り組まれました。支援終了後も発明発掘に引き続き取り組むなど、継続的な知財活動が始まっていると感じます。60年以上の製造業の社歴に刻まれたノウハウも必ずあるはずであり、今後の梱包機開発が期待されます。
担当:阿部アドバイザー
ご活用いただいた支援メニューのご紹介
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