トップ > 東京都知的財産総合センター > 活用事例 > 知財センター活用事例「仲吉商事株式会社」

知財センター活用事例「仲吉商事株式会社」

「本質」や「革新」のベースとなる知の積み重ねや知財を大切にしたい

日用品や雑貨品の問屋・輸出業からスタートしそこで培った長年のノウハウを製造業にも生かして活躍。現在は1993年から開始した竹木製品の製造販売事業を主軸とし、SDGsに取り組みながら環境に配慮する会社としても注目されている。「本質を見極め、革新を楽しむ」というモノづくりの姿勢が子どもから大人までを対象としたさまざまな商品に息づいている。

代表取締役社長:小林 洋一さん(右) 総務部 知的財産室 次長:中村 英樹さん(左)
代表取締役社長:屋田 高路さん

主な権利

  • 2022年:特許 第7082259号
  • 2022年:実用新案 第3237371号
  • 2022年:意匠登録 第1732960号
  • 2022年:意匠登録 第1732961号
  • 2020年:商標登録 第6315453号

会社概要

  • 所在地:東京都新宿区西新宿3-2-9 2F(東京オフィス)
  • 電話:050-3786-7744
  • URL:https://www.nakayo-shi.jp
  • 業種:竹や木の製品や日用品などの製造・販売
  • 設立:1988年(昭和63年)
  • 資本金:1,000万円

代表取締役社長:小林 洋一さん(右) 総務部 知的財産室 次長:中村 英樹さん(左)
代表取締役社長:屋田 高路さん

唯一無二の技術力を生かしたオリジナルブランドの数々

ベビー・子ども用の天然素材食器ブランド「agney*(アグニー)」。毎日のごはんのシーンが楽しく豊かに広がる。
ベビー・子ども用の天然素材食器ブランド「agney*
(アグニー)」。毎日のごはんのシーンが楽しく豊かに広がる。

 仲吉商事株式会社。なかよししょうじと読む社名は温かく親しみやすいが、実は吉凶の「中吉」から取ったものだと言う。「大吉」ではなく「中吉」にすることで、絶えず向上し続けられるようにとの願いが込められ、さらに「中吉」の横に「人」を加えて一人ひとりの社員への想いも表した。なかなか奥の深い会社である。
 竹や木という天然素材の研究開発に勤しみ、2007年には中国・江西省にある18キロヘクタールの竹山を購入。そこで育成管理した天然の孟宗竹を現地の自社工場で製材し、埼玉県越谷市の自社工場で仕上げ加工した製品を国内外に展開している。ブランドとしては、ベビー・子ども食器の「agney*(アグニー)」、大人向け竹食器の「RIVERET(リヴェレット)」、日常使いの「taffeta(タフタ)」があり、それぞれにファンを獲得。唯一無二の技術力を生かしたオリジナルブランドが、暮らしのさまざまなシーンを彩っている。

ベビー・子ども用の天然素材食器ブランド「agney*(アグニー)」。毎日のごはんのシーンが楽しく豊かに広がる。
ベビー・子ども用の天然素材食器ブランド「agney*
(アグニー)」。毎日のごはんのシーンが楽しく豊かに広がる。
大人のこだわりデザインがある竹製食器ブランド「RIVERET(リヴェレット)」。竹はSDGsに貢献するエコ素材としても近年大きな注目を集めている。
大人のこだわりデザインがある竹製食器ブランド「RIVERET
(リヴェレット)」。竹はSDGsに貢献するエコ素材としても近年
大きな注目を集めている。
普段使いの木製食器ブランド「taffeta(タフタ)」。ブランド名(taffeta:紡ぐ)には「必要な部分だけを紡ぎとり、シンプルに。」という意味が込められている。
普段使いの木製食器ブランド「taffeta(タフタ)」。ブランド名
(taffeta:紡ぐ)には「必要な部分だけを紡ぎとり、シンプルに。」
という意味が込められている。

共同開発の契約内容も知財権の取得も大切

 屋田社長は留学経験が豊富で、オーストラリアの大学では国際経営学部で学んでいる。「経営やマーケティングなどを学ぶ中に、知財の話もありました。当時はまだちんぷんかんぷんだったことを覚えています」と語る。
 知財センターを初めて活用したのは十数年前のこと。そしてニッチトップ育成支援別タブで開くを受けたのは、人からの紹介がきっかけだった。「知財の係争に巻き込まれた経験がありました。他社との共同開発案件で物別れになった際に、先にその商品の特許を取られてしまったのです。最終的に和解しましたが、そこまでにはだいぶかかりました。ですから、共同開発の契約内容も、知財権の取得も大切であると身に染みました。この経験から学ぶことは多かったのですが、まずは、攻めるより守りから固めることが重要である点など、知財についてしっかり勉強しなければと改めて感じました。その点、知財センターのニッチトップ育成支援では体系立てて教えてもらえます。知財はもちろん、契約における注意事項の話もあり、契約書の文章に至るまで丁寧に解説してもらいました。セミナーには開発やデザイン設計、製造、営業のメンバーも参加。特許にするか、意匠にするか、どこをブラックボックスにして秘匿化するか、業務委託等取引時の注意ワードなど、幅広い話題とともに学ぶことができました」

商品開発のスキームの中に知財評価の項目を組み込む

 専門性の高い技術を有しているからこそ、知財管理の仕方も大切になってくる。「私たちは工具や治具などもオリジナルで作っていますから、そうしたものの図面データの管理も重要ですね。アクセス権の制限など、DXの部分も大事になってきます。とにかく社員みんなでコミュニケーションを密に取って管理していきたいです。知財に関してはみんなで話し合える土壌はできましたし、商品開発のスキームの中にも知財評価を既に組み込んでいます。例えば、特許にするか、意匠にするか、その両方にするか。そうした中には『知財センターに相談』という項目もあります。今後はそうしたテンプレートをさらにブラッシュアップしたいです」と語る屋田社長。「それでも、私たちが開発する商品はちょっとした工夫の集まりですから、知財が取りにくいという面もありますけれどね」と語った。

特許ではなく意匠という新たな発想にも力を得る

 知財センターのアドバイザーには、お皿などのプレートの内側すべてを内向きにカーブするように加工した「もぐもぐカーブ」という構造について相談した。「特許を取得したいという相談で知財センターを訪れたら、意匠にしてみたらどうかというアドバイスをもらったんです。その時は意匠登録は頭になかったので、ハッとしましたし勉強になりました」
 知財ミックスという戦略も立てられるようになり、「もぐもぐカーブ」の工夫は子どもたちにとってごはんをすくいやすく、上手に食べられるという喜びの輪を広げた。「食育」の世界にも大きく貢献している同社の技術である。

お子さんがプレートの隅でごはんをすくいやすくなる「もぐもぐカーブ×塞き止めライン」の工夫を意匠登録した。
お子さんがプレートの隅でごはんをすくいやすくなる「もぐもぐカーブ
×塞き止めライン」の工夫を意匠登録した。
お弁当箱にも同社ならではのオリジナリティーがあり、たくさんの技術が凝縮された商品が子どもたちの笑顔につながっている。
お弁当箱にも同社ならではのオリジナリティーがあり、たくさんの技術が
凝縮された商品が子どもたちの笑顔につながっている。

知財を積み重ねていくことがブランディングにもなる

 ホームページでは、「本質を見極め、革新を楽しむ会社です」と会社を紹介し、その上にはシェークスピアの「A rose by any other name would smell as sweet」という言葉が添えられている。バラはどんな名前で呼んでも良い香りがするという意味だ。
 「この言葉からヒントを得て、私たちが創り出すものも、そこに想いがあれば同じだと思ったんです。ブランドの名目が大事なのではなく、見た瞬間の質感と品質と技術で、人を感動させる何かが伝わればいい。モノづくりへの想いを感じてもらえたらいい。それが本質であって、その中でも新しいことを考えてアイデアを出すのは楽しいよね、ということです」 
 そしてこう続けた。「知財という側面から見ても、他社から似たものが出た際に、『仲吉商事のブランドをまねているな』と思ってもらえることが、知財としての防御が成立していることだと思うんです。まねされたら一人前だとも言いますしね。そして、知財の積み重ね、知の積み重ねがブランディングになると感じています」
 最後に、知財は本質の証であり、同時に革新の証であるという大変興味深い言葉を屋田社長よりいただいた。

知財センターからのメッセージ

営業秘密の保護や技術流出防止の取り組みも大切

ニッチトップ育成支援においては、知財の基本的な知識はもとより、営業秘密の保護、技術流出防止の取り組み、契約交渉時のポイントなどについてもお伝えしました。今後も重要技術についてはブラックボックス化する戦略なども交え、具体的な知財管理や商品開発につなげられるような意識改革の継続が重要だと考えています。
担当:琴寄アドバイザー

ご活用いただいた支援メニューのご紹介

PDF版の記事はこちら(ダウンロード)PDF

東京都知的財産総合センター

東京都台東区台東1-3-5 反町商事ビル1F
電話:03-3832-3656(平日:9:00~17:00 ※12/29~1/3を除く)
E-mail:chizai【AT】tokyo-kosha.or.jp
※迷惑メール対策のため、「@」を【AT】としています。