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知財センター活用事例「ニッカー絵具株式会社」

真っ白なキャンバスのような
会社の柔軟性を知財が支えてくれる

代表取締役社長:妻倉 一嘉さん

「色」とともに「感動」を届けたい。
そんな想いとともに、ポスターカラーやガッシュに代表される絵具や画材など、愛され続ける商品を製造・販売。
特に国内アニメーションの現場では圧倒的な支持を得ている。
同社に共鳴するアンバサダーアーティストなどとともにさまざまなコンテンツによって新たな世界を繰り広げている。

主な権利

  • 2016年:商標登録 第5897195号
  • 2021年:商標登録 第6458160号
  • 2022年:商標登録 第6515536号
  • 2023年:商標登録 第6759060号

会社概要

  • 所在地:東京都台東区柳橋2-20-16 サクラ東京ビル
  • 電話:03-6362-5234
  • URL:https://nicker-enogu.com
  • 水彩絵具・画材・デザイン材料の製造・販売
  • 1950年(昭和25年)
  • 資本金:1,300万円

代表取締役社長:妻倉 一嘉さん

日本のアニメーションを支え続けてきた大切な色

多くの人に親しまれ続けているニッカー絵具のポスターカラー。アニメ「ジャングル大帝」のアフリカの空は、セルリアンブルーの色で鮮やかに彩られたという。
多くの人に親しまれ続けているニッカー絵具のポスターカラー。アニメ
「ジャングル大帝」のアフリカの空は、セルリアンブルーの色で鮮やかに
彩られたという。
「ファン・アクリックガッシュ デザインセットANS」は、絵具にパレットケース、ミニ雑巾、デザイン筆、定規、金属棒を付属した教材向けデザインセット。

「ファン・アクリックガッシュ デザインセットANS」は、絵具にパレットケース、
ミニ雑巾、デザイン筆、定規、金属棒を付属した教材向けデザインセット。

 あのスタジオジブリが創業時から背景美術の材料として使用していた絵具がある。そしてさらに古くは「鉄腕アトム」のブーツのグレー色として使われた、こだわりある絵具の色を開発した会社がある。ニッカー絵具株式会社だ。
 「私が入社した頃は、経営状況も大変でいろいろと苦労もありました。知財に関するルールもなく、経営陣は商標のこともよく分からなかったくらいです。中小企業振興公社の方から、助成制度などもあると紹介されて知財センターを知ったのは6〜7年前のことです。海外への進出も進めていきたいので、社名の商標を取りたいと相談に行って『国内でも登録されていませんよ』『えっ?』という話になったのが最初です」と語る妻倉社長。その後は国内の商標登録はもちろん、アジア各国で知財センターの外国商標出願費用助成事業別タブで開くを活用しながら、商標登録を進めた。

知財センターの助成によって海外での冒認商標問題に対応

 3年ほど前には、中国において第三者が同社の社名の商標出願をしていたという、いわゆる冒認商標の問題が生じた。「順調に海外での販売も進んでいた頃ですが、紙類や文房具類が含まれる商品区分で、先行商標が見つかりました。調べてみたら、メジャーな会社の商標を登録して商標ビジネスを行っているような会社でした。ちょうど知財センターのニッチトップ育成支援別タブで開くを受けようとしているタイミングでしたからアドバイザーに相談し、弁理士も含めて対応を協議しました。また、これに伴って知財センターの海外商標対策支援助成事業別タブで開くを活用することができました。その結果、商標の不使用取消審判を請求し、これが認められたんです。やっと解決の出口まで来たという感じですし、タイミングよく知財センターとのつながりができていたことは大きな力になりましたね」と妻倉社長は語る。

著作権に関するガイドラインの整備も重要

文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」の授業に対応したガイドブック。デジタルに強いことも同社の大きな魅力である。
文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」の授業に対応
したガイドブック。デジタルに強いことも同社の大きな魅力
である。

 ニッチトップ育成支援の内容については、「最近ではデジタル関係のものを自分たちで創作することも多いので、著作権などの視点でやっていいこと悪いことをセミナーで伝えてもらったりしました。当社では早くから動画サイトを利用しています。登録者の約半分が海外ユーザーであり、動画を見たというきっかけから取引につながることもあります。そんなユーザー・ダイレクト・マーケティングは、かなり以前からずっと意識していました。そうした中で、私たちはアニメーション作家の方々にも協力してもらっているので、著作権に関するガイドラインの整備も非常に大事になります。こうした面でも知財センターにサポートしてもらいました。ダイレクトな商品というよりも、販売促進を含めた周辺ツールにおいて、特に知財の知識を活用させてもらっていますね」と、有意義な内容だったことを熱く語った。

文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」の授業に対応したガイドブック。デジタルに強いことも同社の大きな魅力である。
文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」の授業に対応
したガイドブック。デジタルに強いことも同社の大きな魅力
である。

プロフェッショナルのチームである知財センター

 知財センターのアドバイザーは話しやすいと妻倉社長は言う。「ある分野で相談ごとがある場合に、普通に考えたらまず、つてを探すところから始めますよね。でも知財センターは、一つの窓口から案件ごとに必要なプロフェッショナルを用立てしてくれるので、事がスムーズです」そして、こう続けた。「どんな相談ごとでも、むげにされないので(笑)、まずはそこの信頼というか安心感はありますよね。そしてどんなことでも親身になって何らかのアドバイスをもらえるので、私は知財センターをコンサルタント的なイメージで利用していました。当社のような社員数も少ない、人を増やせない中小企業では、一人が何役もこなしていくしかありません。私も会社の経営の方向性を考えたりする上で誰かに話したいこともあります。そんな会社に近い外部のスタッフとして手頃とも言えるのが、知財センターという存在だと思います」

さらにたくさんの人たちに青空を描く世界を届けたい

マーブリング(絵具でマーブル模様を描く技法)を誰でも簡単に楽しめるようにしたセット、「マーブリング・デコ」シリーズ。
マーブリング(絵具でマーブル模様を描く技法)を誰でも簡単に楽しめるようにしたセット、「マーブリング・デコ」シリーズ。

 ニッカー絵具の未来は、どんな色で彩られていくのだろうか。妻倉社長は「色を塗るという会社ですけれどフランクで真っ白であることも特徴だと思います。こうでなければいけないというものを外した、柔軟さはあります」と繊細な言葉で語る。
 その言葉を裏付けるように、同社の事業は近年、多方面に大きな広がりを見せている。アニメーション背景美術ワークショップを継続的に開催。テクニックを学べる貴重な機会であると、多くの人から喜ばれている。また、2024年11月には「猿島×アート」と題して、横須賀からフェリーで猿島に渡り、みんなで絵を描くというワークショップに協力。アートとツーリズムが楽しくワクワクする形で融合した。こうした一般参加型のイベントも、絵が好きな人やアニメファンなどの心に響き、新たな同社のファン獲得にもつながっている。そして、「人の手で描く」というアナログ技術の継承にもつながっている。絵の世界を通じて、人と人との輪が広がっているのだ。
 世界中の人たちに同社の商品を届けたい、触れてほしいと語る妻倉社長。最後に「長年にわたって多くの人たちに親しまれてきた当社の商品に誇りを持ちながら、裾野を広げていく活動をこれからも続けていきたいです」と語った。
 ニッカー絵具が描く青空は、これからもいろんな形で、ずっと遠いところまで続いていくのだろう。

マーブリング(絵具でマーブル模様を描く技法)を誰でも簡単に楽しめるようにしたセット、「マーブリング・デコ」シリーズ。
マーブリング(絵具でマーブル模様を描く技法)を誰でも簡単に楽しめるようにしたセット、「マーブリング・デコ」シリーズ。

知財センターからのメッセージ

デジタルデバイスにおける知財管理も重要

学校教育における売上は大きく、商品を教師が利用しやすい指導情報など、マーケティング戦略に則った販促ツールの開発なども重要であり、知財保護や権利確保などの実践的な展開が求められます。また、デジタルデバイスが普及している昨今、インターネット上での知財管理も重要で、こうした面でもアドバイスを行いました。
担当:金木アドバイザー

ご活用いただいた支援メニューのご紹介

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