知財センター活用事例「株式会社マテリアルハウス」
光が射すように知財の知識が行き渡り次の世代の躍動へとつながっていく
自然光を導くように取り込んで照明として活用し省エネを実現する「光ダクト」などのシステムを開発。
人にも地球にもやさしいサステナブルな技術は、太陽の恵みを、人々の営みを育む新しい光空間につなげている。
また、東京都立産業技術研究センターと連携を行うなどその卓越した開発力が、明日の社会に光をもたらそうとしている。

工業製品事業部:小出 寛子さん(中)
株式会社AYLE 代表取締役:遠藤 真紀子さん(左)
主な権利
- 2022年:特許 第7057570号
- 2022年:特許 第7114848号
- 2023年:特許 第7393771号
- 2018年:意匠登録 第1602955号
- 2021年:商標登録 第6441531号
会社概要
- 所在地:東京都大田区仲池上1-19-3
- 電話:03-3751-5158
- URL:https://www.materialhouse.co.jp
- 業種:非鉄金属材料の販売と光ダクトなどの製造・開発
- 設立:1947年(昭和22年)
- 資本金:3,500万円

工業製品事業部:小出 寛子さん(中)
株式会社AYLE 代表取締役:遠藤 真紀子さん(左)
穏やかな太陽の恵みを人々の大切な空間へ届ける

銅、アルミ、ニッケル、錫などの非鉄金属素材の販売と加工を主な事業としている株式会社マテリアルハウス。その活躍の舞台はさまざまな分野にわたっている。釣り具ではリールの金属として広く使われ、鉄道関係においては新幹線や特急列車のボディ、さらには駅のホームドアの素材として社会を支えている。そうしたマテリアルの技術を応用して近年立ち上げた事業が、自然採光事業だった。ドイツから輸入している特殊なアルミニウム素材を光のキーデバイスとし、「光ダクト」に応用。トップライトなどの採光部から取り込んだ自然光を、アルミの高反射材で効率よく室内へ導き、壁面や天井面から放光して空間を照らす。つまり、地下などの暗い場所にも自然光の明るさをもたらすことができるのだ。
ところが、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発した建築コストの高騰が事業を直撃し、着工後の採用中止が相次いだ。そこで、現状体制のままでは事業継続が困難と判断し、2023年末に建設業の部分の組織を解散。装置の製造・開発のみを継続することとした。
社員からボトムアップで上がってきた提案を即決
そして自然採光事業そのものは、同社の事業部長だった遠藤さんが2024年5月に新たに設立した採光コンサルタント企業、株式会社AYLE(エール)へ移管することになった。遠藤社長は新井社長の娘でもあり、自然採光が人にもたらす可能性を広げるために、引き続き情熱を注ぎたいということでの新体制となった。
同社が知財センターのニッチトップ育成支援を受けたのは2021年から。この時にコンタクトを取ったのが遠藤さんだった。「ウェビナーに参加した際に知財センターについて知り、ホームページを見てニッチトップ育成支援のことを知ったのです。無料ですし、支援の内容も素晴らしいので、会社のみんなにも相談して支援を受けることにしました」
これに新井社長が続けた。「以前に外国特許出願費用助成事業を活用したことはありましたが、しっかりと知財について学ぶ機会は初めてでした。それまでは私一人が知財担当だったようなものですし、とても良いチャンスだと感じましたね。社員の提案資料もよくまとまっていて、即断で許可したことを覚えています」
知財に関するアドバイザーのレスポンスが早かった
ニッチトップ育成支援ではセミナーを17回開催するなど、内容の濃いサポートが行われた。「すごい数でしたね。おかげさまで社員の知財レベルがかなり上がったと思います」と目を細める新井社長。
遠藤さんは「セミナーの内容は、知財センターのアドバイザーから『こういう内容はどうでしょうか』という提案もあり、それで続けていったらいつの間にか17回になっていました」と語り楽しそうに笑った。また、新井社長は「途中で質問した内容のいくつかが次のセミナーの話題に入ってくるので、とても分かりやすかったですね。技術系のメンバーにも好評でした」と続けた。
ニッチトップ育成支援の社内リーダーだった小出さんは「内容を当社に合わせてもらいましたね。疑問が生じた時にはすぐに気軽に尋ねることができましたし、知財センターのアドバイザーはレスポンスが早いので助かりました」と語った。
社員たちが力を合わせて自発的に特許を出願
ニッチトップ育成支援期間中には、社員が自発的に特許を出願したものもある。トップライトや光ダクトの光を特殊装置で拡散し、木漏れ日のような光模様を演出する「スカイシャワー」という自然採光製品で、新しく光を揺らす方法を発案したのである。遠藤さんたちと一緒に取り組んだ小出さんは「展示会に出展するためにいろいろと準備や工夫を重ねていて、アイデアが生まれました。私は社内で開発に携わる技術スタッフではないので、それまで特許のアイデアの部分から関わることはありませんでした。でも、こういうことが発明につながるんだと驚きましたし、うれしかったですね」と語った。


特許に関する新規性の話もさらっとできるほど
成長した

光が射し、行き渡っていくかのように、知財について学んだ成果がすでに表れている。小出さんが続けて語ったのはニッチトップ育成支援で得た知識を、実際に自分たちで使ったという経験だ。「知財センターのアドバイザーから、私たちが発明のアイデアを持っていたことを証明するために、公証人役場で手続きして確定させるという方法を学んでいました。共同で展示会を主催していた会社とも書類を交わすなど、自分たちで特許を出願するという以外のことまで自力でできたことは、大きな自信になりました」
遠藤さんも「新会社でコンサルティングを行う時に、ある会社に『開発したものを展示会に出すと新規性が失われますから、特許出願を考えられた方がいいですよ』とさらっと言えました。知財センターとのやり取りの中で自然に身に付いたことでしょうけれど、その言葉を口にしている自分にも驚きました」と語った。光をつなげるかのように、他社にも知財の知識を届けている。
新たな場所に光を届ける「光ダクト」の技術があるように、次の世代に光を届けることを何よりも喜ぶように新井社長の笑顔が柔らかく輝いていた。

知財センターからのメッセージ
事業に変化はあっても知財の学びで得たことは不変
ニッチトップ育成支援を通して人材を育成するとともに、知財と経営との関わりを強化することもできました。事業の継続が難しくなった部分はありますが、知財担当者が会社に残ること、社長も技術者として採光事業に関わることなどもあり、今後もニッチトップ育成支援の経験を活かして歩み続けていただきたいと思います。
担当:山下アドバイザー
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