知財センター活用事例「エレクター株式会社」
知財が部門を越えた新しくて楽しいコミュニケーションツールになった
収納や保管、搬送を機能的に融合したワイヤーシェルフをはじめ病院向けの配膳車や下膳車、物流向けのパレットラックなどの製造・販売を行っているメーカー。
また、アメリカなどから海外輸入したアイテムの販売を行うなどさまざまな業界のプロフェッショナルの要求に応え、高い品質の製品を届けて「時を超える信頼」を生み出している。
生産本部 製品開発部
デザイン戦略グループ マネージャー:長野 広信さん(左)
主な権利
- 2018年:特許 第6427834号
- 2017年:意匠登録 第1581347号
- 2017年:意匠登録 第1581348号
- 1985年:商標登録 第1845899号
- 1997年:商標登録 第4092431号
会社概要
- 所在地:東京都目黒区上目黒2-1-1 中目黒GTタワー14F
- 電話:03-6742-0000
- URL:https://www.erecta.co.jp
- 業種:ワイヤーシェルフ、配膳車、物流用ラックなどの製造・販売
- 設立:1966年(昭和41年)
- 資本金:8,800万円
生産本部 製品開発部
デザイン戦略グループ マネージャー:長野 広信さん(左)
フードサービスや物流など多くの業界を支える企業
この国におけるワイヤーシェルフのパイオニアであるから多くの人が目にしたことがあるだろう。エレクター株式会社が生み出した「エレクターシェルフ」は、業務用として日本の産業を支え続け、特にホテルやレストランなどフードサービス業界では名を馳せている。また、物流業界向けのパレットラック「ネステナー」もスタンダードとしてよく知られている。
知財センターによる最初のニッチトップ育成支援を受けたのは、2012年から。勉強会を中心とした内容だった。2度目の支援を受けた今回は、メンバーもだいぶ変わっている。製品開発部 デザイン戦略グループ マネージャーの長野氏は「私が中途採用された2021年に、中期経営計画で知財を強化しようという話がありました。私は元々デザイン分野が専門でしたから、意匠なども含めて、デザイン戦略グループで知財についても担当することになりました」と語る。
強耐久性があり、組み合わせによってスペースを有効活用できる。
「知財プロジェクト」を各部門合同で立ち上げる
続けて長野氏は、同社独自の取り組みについて語った。「ニッチトップ育成支援を受けたのは2022年4月からですが、その前の1月に『知財プロジェクト』を社内で立ち上げました。それで各部門から集まった10名くらいでキックオフしました」
生産本部 副本部長の菊田氏は「当社では知財担当部門を設けていませんが、やるとなると1人や2人では抱えきれません。例えば営業秘密というテーマ一つを考えても、多くの人が知っていなければならない。ですから、そこは自然にプロジェクトを組めたと思います」と語る。
分科会形式にして知財の検定を通じ交流の輪を広げる
ニッチトップ育成支援は、職務発明規程の整備から始まったが、「最初の1年くらいは、メンバーへの教育的な内容を重視しました。2年目頃のタイミングで、みんなで知的財産管理技能検定の3級を受検して7割ほどが合格し、その中から各分科会のリーダーを選出して知財戦略、営業秘密、出願管理という3つの分科会にする形を取りました。それぞれが自身の仕事に近いテーマの分科会に入り、身近に感じたことでその後の活用にもつながったと思います。全体のミーティングも行いつつ、オリジナルで資料を作成し、eラーニング教材なども活用しながら学びを進めました」と長野氏。菊田氏は、「ただし、途中で部門の異動など人の入れ替わりもありましたから、後任の人にまた一から基本を教えるなど、そんなに順風満帆でもなかったんです。でも結果として知財検定3級を取得した人数も20名ほどに増えましたし、よく頑張って進めたと思います」とメンバーの労をねぎらった。ちなみに、長野氏と営業マネージャーの2名は2級を取得している。
「知財検定を通じて、部門をまたいだコミュニケーションもかなり広がりました。事務の担当者がデザイン部門のところに来て知財の話をしていたり。そんな交流は面白いと思いましたね。小グループでレクチャーをしたり、社内模擬試験みたいなことをしたり。手間をかけただけのことはあったのではないでしょうか」と菊田氏。知財を媒介にした、さまざまな波及効果もあったようだ。
シェルフ」。ニッチトップ育成支援中に開発し、意匠権取得、商標・特許出願中。
思わぬところに成果が出て会社の実績にもつながった
具体的な成果も得られたと菊田氏。「当社の主力のワイヤーシェルフの製品において、営業のメンバーから、『この他社製品はウチのものに似ているけど、おかしくありませんか?』という情報が上がってきたのです。その後、意匠権の侵害として適切に対処し、販売差し止めにつながりました。ですから、一般的には開発部門が知財について考えがちでしょうけれど、そうではないところで思わぬ成果が出て、実績にもなりました」
商標権についても取り組みを行い、学んだことを活用することができたと言う。
長野氏は、また違う視点での大きな成果を語った。「職務発明規程の整備後に、開発者が新たな製品について特許と意匠を出願しましたから、モチベーションの向上にはつながっていると思います」
これに菊田氏も「社内の仕組みが整っていないと、知財権を出願するのはどちらかと言うと余計な仕事だと考えがちでしょう。でも、そのことが評価される体制にした意味合いは大きいのではないかと思います」と笑顔で続けた。
知財という「いのち」を吹き込み続けたいという想い
商標に対する意識も向上し、ブランドマネジメント委員会を立ち上げ、同社のブランドにおける表現のルールをまとめた。「これができたのも、知財のベースができていたからでしょう」と長野氏。
ニッチトップ育成支援の課程が修了した際には、修了証書授与のシーンをイントラネットの社内報にアップして社員に伝えた。すべての過程を楽しみながら、取り組んでいるように見える。会社理念のELECTA SPIRITSには、冒険心、挑戦心、向上心、貢献心の4つの心が掲げられているが、まさにそうした心とともに知財への取り組みが進められたとも言える。それでも長野氏は「これからだと思います。取り組みをしっかり根付かせていきたい」と語り、菊田氏も「仕組みは上手くできたので、普段から意識して持続させていきたい」と語った。「空間にいのちを吹き込む」というビジョンのある会社の、知財という「いのち」を吹き込み続けたいという熱い想いが感じられた。
知財センターからのメッセージ
「知財プロジェクト」メンバーから会社全体へと浸透
ニッチトップ育成支援においては、相談事のやり取りは多かったですが、基本的には自主的にメニューを決めて、細かいところまで自ら考えて行動する姿勢に驚かされました。また、「知財プロジェクト」のメンバーを通じて会社全体に知財に対する情報や意識が広がったことは、中小企業の知財への取り組みの好例だと感じています。
担当:西郷アドバイザー
ご活用いただいた支援メニューのご紹介
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