2026.8.4
【相談員が解説】
初めての海外取引!失敗しない「英文見積書(Quotation)」の作り方と注意点
窓口でよくいただくご相談の一つに、『海外から引き合いが来たけれど、見積書ってどう作ればいいの?』というものがあります。
実は、英文見積書を国内と同じ感覚で作ると、思わぬトラブルになることが少なくありません。実際に「国内の見積書をそのまま英語にしただけ」で送った結果、輸送費や保険料の負担でもめて破談になってしまったケースもありました。
そこで本コラムでは、初めての方でも迷わず作れるよう、海外取引ならではの注意すべきポイントを交えながら、英文見積書の作り方をステップ順に解説します。
目次
- ステップ1:Letterheadを作る
- ステップ2:見積書(Quotation)の表題
- ステップ3:見積番号と日付(有効期限)
3-1. 見積番号(Quotation No. / Quote No.)
3-2. 発行日(Date)の書き方
3-3. 有効期限(Validity) - ステップ4:宛先(To / Sold To / Prepared For)
- ステップ5:見積内容(明細一覧)
- ステップ6:見積条件(Terms & Conditions)
6-1. 引き渡し条件(Delivery / Trade Terms)
6-2. 支払い条件(Payment Terms)
6-3. 納期(Lead Time) - ステップ7:結び(Closing & Signature)
7-1. 結びの言葉(Closing)
7-2. 責任者のサイン(Signature)
7-3. 氏名のタイピング & 役職(Title) - ステップ8:見積書を送付する際のメールの注意点
ステップ1:Letterheadを作る
レターヘッドとは?海外のビジネス文書に欠かせない「専用便せん」
レターヘッドとは、一言でいうと「企業のロゴや基本情報があらかじめ印刷された公式の便せん」のことです。
便箋というと季節に合わせた絵柄が入っているものを思い浮かべますが、海外のレターヘッドはビジネスでの信用度を上げる大切なものです。
用紙の上部に、【会社のロゴ・社名・所在地・電話番号・ウェブサイト・代表メールアドレス】などが網羅されているのが一般的です。
海外のビジネスシーンでは、企業が発行する「公式な文書」にはこのレターヘッドを使うのが鉄則ですから海外の企業と取引を行う予定がある場合は、あらかじめ自社専用のレターヘッドを作成しておきましょう。
レターヘッドを作成する際は、少なくとも以下の5項目を記載しておきましょう。
・企業のロゴ
・正式な企業名(英語表記)
・所在地(英語表記)
・電話番号(国際番号対応)
・ウェブサイトのURL
💡 海外取引でのワンポイント
英語で記載する場合、電話番号の先頭に日本の国番号(+81)をつけたり、住所を英語の順序(番地→市区町村→都道府県)で表記したりしておくと、海外の取引先にもより親切でスムーズに伝わります。
ステップ2:見積書(Quotation)の表題
レターヘッドを準備したら、次は書類の「表題(タイトル)」です。これが「見積書」であることを明確に示しましょう。
「見積もり」と言う言葉を辞書で調べるとQuotation と Estimationの二つ出てきます。「Estimation」は概略の予算見積もりなどの予測も含むものに使われ、「Quotation」は確定的なものを表します。
海外へ製品の具体的な価格を提示する(正式な見積書を出す)場合は、表題に「Quotation」を使いましょう。
Quotation(クォーテーション)
意味: 確定的な見積もり、価格提示
特徴: 製品の仕様や数量が決まっており、「この価格を含む条件で販売します」という確定的な金額を示す際に使用します。
ステップ3:見積番号と日付(有効期限)
書類の右上など、分かりやすい位置に「見積番号」と「発行日(日付)」、そして「有効期限」を記載します。
① 見積番号(Quotation No. / Quote No.)
日本国内の取引と同様、海外取引でも見積番号の管理は必須です。取引先は、この番号をもとに発注(注文)や問い合わせをしてきます。後から社内で「いつ、誰に出した、どの見積もりか」をすぐに特定できるよう、しっかり記載しましょう。
② 発行日(Date)の書き方
英語で日付を書く際は、「月」を数字(7など)ではなく、英単語(Julyなど)で表記するのが鉄則です。国によって日付の並び順が異なるため、数字だけで書くと大きな混乱を招く原因になります。
例:2026年7月1日の場合
アメリカ式: July 1, 2026 (月 / 日 / 年) *本コラムのサンプル見積もりはアメリカ式で作成しています。
イギリス式: 1 July 2026 (日 / 月 / 年)
⚠️ なぜ単語で書くべき?
もし「01/07/2026」と数字だけで書いてしまうと、アメリカ企業には「1月7日」、イギリス企業には「7月1日」と解釈されてしまい、トラブルの元になります。
③ 有効期限(Validity)
日付のすぐ下には、必ず「この見積もりの有効期限」を記載します。海外取引では為替レートの変動や原材料費の高騰があるため、期限を切っておかないと後から思わぬ不利益を被るリスクがあります。
記載例:
Valid until July 31, 2026 (2026年7月31日まで有効)
Valid thru end of July 2026 (2026年7月末日まで有効)
ステップ4:宛先(To / Sold To / Prepared For)
見積番号と日付(有効期限)の反対側、一般的には書類の左上に、取引先(見積書を提出する相手)の情報を記載します。
上から順に、以下の構成で記載するのが基本です。
1.先方の企業名
2.担当者名、役職(部署名)
3.先方の所在地(住所・国名)
担当者名の書き方(Attention)
特定の担当者へ宛てる場合は、名前の前に “Attn:” または “Attention:”(〜気付、〜担当者様という意味)をつけます。 名前には敬称(Mr. / Ms.)をつけ、役職(ポジション)や部署名が分かっている場合は、名前の下(または後ろ)に併記します。
記載例:
Attn: Mr.John Smith (Purchasing Manager)
《購買部マネージャー John Smith様宛という意味》
💡 宛先を書くときの注意点(チェックポイント)
-
名前から性別が分からない場合は?(重要)
海外の方の名前は、ファーストネームだけでは男女の判断がつかないケース(例:Alex, Chris, Taylorなど)が多々あります。性別を間違えるのが最も失礼にあたるため、確証がない場合は無理に「Mr. / Ms.」をつけず、フルネームだけで記載するのが世界共通のスマートなリスク回避策です。
記載例: Attn: Alex Morgan
もし「呼び捨て」のような形になるのがどうしても気になる場合は、名前の前に “Attn:”(〜担当者様)がついているだけで十分に敬意は伝わりますが、役職(Job Title)が分かっているなら、名前の後ろに必ず役職を添えることでビジネス文書としての品格が保てます。
記載例:
Attn: Taylor Smith (Marketing Director) -
スペルミスは厳禁
企業名や個人名のスペルミスは、ビジネスにおいて非常に失礼にあたります。事前に名刺やメールの署名、相手の公式サイトなどで正確な表記を必ず確認しましょう。 -
部署宛ての場合
担当者が不明で部署宛てに送る場合は、Attn: Sales Department(営業部御中)のように記載します。 -
国名も忘れずに
所在地(住所)の最後には、必ず国名(例: USA, Singapore など)を記載してください。
ステップ5:見積内容(明細一覧)
書類の中央部分には、具体的な製品名や数量、金額などの「明細(表)」を記載します。各項目の英語表記は以下を参考にしてください。
-
①Description(または Item)
意味:品名 / 仕様
製品の名前や簡単な仕様を記載します。 -
②Model(または Part No.)
意味:型番 / 品番
製品を特定するための型番を記載します。 -
③Unit Price
意味:単価
製品1個あたりの価格です。
通貨単位(USD、EUR、JPYなど)も明記します。 -
④Quantity(または Qty)
意味:数量
注文個数です。 -
⑤Amount(または Total)
意味:金額 / 小計
「単価 × 数量」の合計金額です。 -
⑥Total
意味:金額 / 合計
全ての金額の合計を記入します。
💡 初心者が見落としがちな金額の注意点!
-
通貨(USDなど)は「表の見出し」に明記する
単に $ とだけ書くと、米ドル(USD)なのか、オーストラリアドル(AUD)や香港ドル(HKD)なのか区別がつきません。かといって、すべての金額の前に USD などと書くと、今度は表が混雑して見づらくなってしまいます。
誤解を防ぎつつスッキリ見せるために、画像のように表の見出し(タイトル欄)に UNIT PRICE (USD) や AMOUNT (USD) と記載しましょう。 これなら、表の中の数字がすべて「米ドル」であることが一目で伝わります。(日本円なら JPY、ユーロなら EUR に変更してください)
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カンマ(,)とピリオド(.)の使い方
日本と同じく、数字の区切りは「カンマ(,)が千の位、ピリオド(.)が小数点」で統一して記載すればOKです。 -
消費税(Tax)の表記は不要
製品を海外へ輸出する場合、国内での消費にあたらないため免税(消費税は非課税)となります。そのため、日本国内の見積書にあるような「消費税欄」や「税込(Tax Included)」の表記は不要です。 -
関税や運賃、保険料の負担はどうなる?
海外取引では、現地での関税、船や飛行機の運賃、輸送中の保険料を「売り手と買い手のどちらが、どこまで負担するか」が非常に重要になります。これらは、見積書の最下部に記載する「引き渡し条件(インコタームズなど)」によって決まるため、明細欄ではなく次のステップで条件を明記します。
インコタームズに関するコラムはこちらから
💡金額は「日本円」と「外貨」どちらで書くべき?
初めて海外取引をする際、「見積もりの金額は日本円(JPY)で書くべき?それとも米ドル(USD)?」と悩む方は非常に多いです。 これは「為替(かわせ)リスクをどちらが負うか」という大問題につながるため、以下の特徴を知った上で選択しましょう。
迷ったときの判断基準:
社内に為替管理のノウハウがない最初のうちは、まずはリスクのない「日本円(JPY)」での提示から交渉してみるのがおすすめです。
もし相手から「米ドル(USD)で再提出してほしい」と言われた場合は、ドルで記載しても構いません。ただし、為替変動で損をしないための防衛策として、ステップ3で解説した「見積書の有効期限(Validity)」を「2週間〜1ヶ月」など通常より短めに設定して発行するようにしましょう!
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日本円(JPY)で記載する(円建て)
自社にとって最も安全です。為替レートがどれだけ変動しても自社に入ってくる金額が変わらないため、為替リスクはゼロになります。(為替メリットもゼロです。) -
米ドル(USD)などの外貨で記載する(外貨建て)
世界共通の決済通貨なので取引が最もスムーズに進みます。ただし、自社が為替リスクを負うことになります(見積もり時より入金時に「円高」が進んでいると、日本円に換算したときに目減りして大損するリスクがあります)。
継続して取引する場合は定期的に価格の見直しが出来る契約にしておくと良いでしょ
💡 💡もう一歩進んだアドバイス:見積もりを出す前の「輸出のルール」チェック💡 💡
見積もりの作り方とは少し離れますが、書類を相手に送る前に必ず確認しておきたい大切なルールがあります。
国際取引では安全保障上の厳格な決まりがあり、「取引が禁止されている相手(国や団体)」や、「無許可で海外へ輸出してはいけない製品・技術」が細かく定められています。見積書は契約書ではありませんが、「この条件なら売ります」という企業としての正式な意思表示です。相手が「では買います」となった後で、「実は法律の規制で輸出できなかった」という事態になると、企業の信用を大きく損なうトラブルに発展しかねません。
「自社の製品や取引相手に問題がないか」と少しでも不安な点がある場合は、見積書をバイヤーに送る前に、まずは一度、当相談窓口(※都内中小企業・事業者様対象)へお気軽にご相談ください。
事前に正しい手順を踏んでおくことこそが、海外ビジネスを成功させる確実な防衛策になります!
ステップ6:見積条件(Terms & Conditions)
見積書の最下部(または明細の下)には、取引の前提となる「見積条件」を記載します。海外取引では文化や法律が異なるため、ここを曖昧にすると大きなトラブルに発展します。必ず以下の3大条件を明記しましょう。
① 引き渡し条件(Delivery / Trade Terms)
通関費用、運賃、保険料などの負担や、商品に何かあった際の「リスクの移転タイミング」を指定します。
通常は世界共通の貿易ルールである「Incoterms 2020(インコタームズ)」から適した条件を選び、地名を添えて記載します。
記載例: FOB Yokohama
意味: 横浜港での船積みまでの費用とリスクは売り手(自社)が負担し、それ以降(海上運賃や相手国での関税など)は買い手が負担する、という意味になります。
🔗 インコタームズ2020の詳細な分担方法については、こちらの解説をご覧ください。
② 支払い条件(Payment Terms)
代金の決済方法と時期を記載します。初めての取引やリスクを抑えたい場合は、「前金(海外送金)」を指定するのが最も安全です。
記載例
電信送金による前金:Payment: 100% T/T remittance in advance
(T/T remittance: 電信送金(銀行振込)、in advance: 前払い / 前金)
期限期日を指定する場合:Within 7 days after issuance of sales confirmation
(注文請書の発行から7日以内の支払い)
💡 交渉のワンポイント
初回は前金が安全ですが、交渉次第では変更を求められることもあります。その場合は相手の信用調査を行うか、またはより安全な決済手段として銀行経由の「信用状(L/C)」などを検討・相談しましょう。相手の要求を鵜呑みにせず、まずは自社の安全確保を最優先に心がけることが大切です。
③ 納期(Lead Time)
注文が確定してから、いつ出荷できるかの期間を定めます。
船や飛行機の遅延リスクを排除するため、「自社工場から出荷できるタイミング(工場渡しの期間)」で記載するのが売り手にとって安全です。
記載例: Ex-factory 30 days after firm order
意味: 確定注文を受け取ってから「30日以内に自社工場から出荷」という意味になります。これなら、出荷後の輸送トラブルによる遅延の責任を負わずに済みます。
ステップ7:結び(Closing & Signature)
見積書の最後(右下または左下)には、書類を締めくくる結びの言葉と、この見積内容に責任を持つ人のサイン(署名)を記載します。
💡 誰のサインをすればいいの?
海外取引において、見積書にサインした人は「その金額や条件に責任を持つ人(権限がある人)」とみなされます。 初めて見積書を作る場合は、勝手に自分のサインをせず、営業部門の責任者(上司やマネージャー)のサインをもらうか、誰の名義で出すべきかを必ず事前に社内で確認しておきましょう。
配置は上から順に、以下の構成にするのが一般的です。
1.結びの言葉(Closing)
2.直筆のサイン(Signature)
3.氏名のタイピング & 役職(Title)
① 結びの言葉(Closing)
日本語の「敬具」にあたる表現です。公式なビジネス文書では、最も丁寧で一般的な以下の表現を使用します。
記載例:
Sincerely yours, または Sincerely, (コンマを忘れずに!)
② 責任者のサイン(Signature)
結びの言葉の下に、数行分の空白(スペース)を空け、そこに責任者が「直筆」でサインをします(※PDFなどで送る場合はデジタルサインでも可)。 海外取引では、スタンプ(角印)よりも「個人のサイン」が公式文書としての強い効力を持ちます。
③ 氏名のタイピング & 役職(Title)
サインのさらに下に、誰のサインなのかが分かるよう、名前をタイピングで印字し、その下に役職(ポジション)を記載します。
これで見積書の完成です。記載に誤りが無いかダブルチェックを忘れずに行いましょう。
ステップ8:見積書を送付する際のメールの注意点
最後に、完成した見積書を相手にメールで送付する際の注意点と、そのまま使えるシンプルなメールの書き方を説明します。せっかく完璧な見積書を作っても、メールが分かりにくいと見落とされてしまう原因になります。以下の2つのポイントだけ意識してください。
✉️ メールの重要ポイント
-
1.見積書は必ず「PDF」で添付する
Excelなどのデータのまま送ると、文字化けや金額の改ざんのリスクがあります。必ずPDF形式に変換して添付しましょう。 -
2.件名に「見積番号」を入れる
相手が後から検索しやすいよう、件名には必ず「見積書(Quotation)」であることと「見積番号」を記載します。
📄 【初心者向け】一番シンプルな送付メールテンプレート
海外取引のメールは、短く用件だけを伝えるのがベストです。
【件名】
Quotation (Ref: GT-20260701-01) - Globex Trading
(訳:見積書(番号: GT-20260701-01)- グロベックス・トレーディングより)
【本文】
Dear Ms. Sarah Johnson,
(※性別が分からない場合は Dear Sarah Johnson,)
Thank you for your inquiry.
(お引合いただきありがとうございます。)
Please find attached our quotation (No. GT-20260701-01).
(ご依頼の見積書(No. GT-20260701-01)を添付いたしましたのでご確認ください。)
Please let us know if you have any questions.
(ご質問などがございましたら、いつでもお知らせください。)
Best regards,
(よろしくお願いいたします。)
Taro Yamada
GLOBEX TRADING JAPAN KK
まとめ:ルールさえ押さえれば、海外取引は怖くない!
初めての英文見積書づくりは難しく感じられるかもしれませんが、基本の型と海外取引ならではのルール(通貨表記、インコタームズ、支払い条件、輸出規制など)さえ押さえてしまえば、決して怖いものではありません。
まずは自社のレターヘッドを作るところから始めてみましょう。
「この内容で本当にトラブルにならないかな?」「自社の商材に合った英語表現が知りたい」など、少しでも迷うことがあれば、いつでも当相談窓口までお気軽にお問い合わせください。
海外取引の相談はこちら
「この国の場合は他に何を気を付ければいいんだろう?」
「そもそも○○ってなに?」
など、気になったことがあればお気軽に「海外ワンストップ相談」までご相談ください!
アドバイザーの資格を持つ専門家が無料でお答えいたします。
※何度でも無料で利用可能
※事前予約制
あわせて知りたい!
著者:栢野 健(かやの たけし)
1955年東京生まれ。AIBA認定貿易アドバイザー。現在はAIBA貿易アドバイザーの理事も務める。
その他CISTEC安全保障貿易管理士、AEO内部監査人などのスキルも持つ。
元は電気・電子エンジニアとして自動制御機器の設計を行っていた。Engineering Managerとして子会社を立ち上げた米国赴任経験を持ち、海外赴任後は海外営業・販売企画・企画管理等を経験。海外信用調査、与信債権管理、顧客取引審査において30年以上の実務経験を持つ。
※実際の運用は記載と異なる場合があります。
※本記事は、個人の意見・見解です。また、本記事で紹介している情報は、執筆当時のものであり、閲覧時点では変更になっている場合がございます。

