第5回ファイナリストインタビュー

在宅医療患者のためのプラットフォーム事業

在宅医療com株式会社
出塚 豪記 さん
Team

医療関連業界で33年勤務した過程で、在宅医療に関する様々な課題を知る。
課題解決に向けて自分のノウハウを活かすことが患者様への貢献になると考え起業を決意。

Team

起業で苦労を感じたことはなく日々のチャレンジを楽しんでいる。1人起業は瞬発力が大事と語る。

Team

最終的な目標は、地域コミュニティを形成して人間関係を作る上で一助になるようなサービスへと考えている。

代表者インタビュー

事業内容について教えてください
在宅医療に関する情報プラットフォームの制作・運営をしています。
家族の病気をきっかけに、医療における情報の非対称性に強く課題を感じていました。前職で在宅医療に関わる機会があった際にも同様の問題が存在することを実感し、加えて今後ニーズの高まりと大きなビジネスチャンスが見込まれると考え、この事業を立ち上げました。
在宅医療の現状と、今後の展望について教えてください
在宅医療となるのは、入院療養を終えた患者が退院後に外来に通うことが困難な場合が一般的です。退院時に、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーが中心となり、医療機関や行政の医療サービスを手配、調整していきます。患者さんやご家族が、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーの指示に従って在宅医療を受けざるを得ない状況のため、後々、先生と相性が合わない、本来希望していたサービスと異なっていた等の問題が発生しています。今後、個別性や多様性がますます重視される時代になっていきますので、自分自身で情報を集め、納得のいく選択をすることができる情報整備が重要になってくるのではないかと思います。
弊社のミッションは、「理解して、納得して、医療を選び」、「自らの選択に基づき、医療を評価する」環境を整えることです。医療サービスの良し悪しを患者自らが評価することが、医療サービス全体の質の向上に繋がります。今後の展望としては、飲食店口コミサイト「食べログ」のように、ユーザーが医療機関やサービスについて口コミや評価を投稿できる仕組みを作ることを構想しています。また、法律相談のできる弁護士検索サイト「弁護士ドットコム」のように、患者さんやご家族が、医師・看護師・ケアマネジャーに相談できるサービスの実現も目指しています。現在は、医療機関側から掲載料をいただくモデルを採用していますが、将来的には、患者さんやその家族側からも一定の利用料をいただくモデルへの移行も視野に入れています。
どのような経緯で起業を決意しましたか
前職で在宅医療に関わる医療関係者へインタビューを行った際、現場が抱える多くの課題や在宅医療の実態に深く触れました。インタビューの中で医師たちは、「在宅医療の認知度を上げたい」、「在宅医療の質の担保に大きな懸念がある」と語っていました。しかし現場の医療従事者は、日々の業務に追われて忙しく、情報発信にまで手が回らないのが実情です。それならば私がとふつふつと思っていたところ、前職のエレベーター内で偶然目にした東京シニアビジスネスグランプリの広告を見て、自分自身のミッションを実現するための大きな機会であると考え、東京シニアビジスネスグランプリへのエントリー、そして起業を決意しました。
新規事業の展開において、何が大切だと考えていますか
新規事業の展開は、勢いと覚悟が大切だと感じています。少し背伸びをしてでも、自分のビジョンを強く打ち出すことが、相手の興味や信頼につながるのだと実感しています。いずれ実現すると自分自身が信じることで、ビジョンは実現に近づいていくのだと思っています。
また、行動することが大切です。私はこの半年で約600枚の名刺を集めました。最初は成果が出ず、フラットな状態が続いているように感じていましたが、3か月間粘り強く取り組んだところ状況が変わってきました。名刺を交換した方と何度も会うことで関係性が深まり、信頼が積み上がっていったのです。私の感覚では、初対面で成約に至る確率は1%ほどですが、2回目の面談で10%、3回目には33%ほどにまで上がるイメージです。成果を出すには3回会える人を増やすことが重要です。以前はゼロをイチにすること(何もないところから事業をつくること)は非常に難しいと考えていましたが、今は日々少しずつ行動を積み上げていくこと、そして経験に基づき改変していくことがゼロをイチにするのだと確信しています。
起業の中で苦労したことや、会社員時代と比べて感じた違いはありますか
起業において苦労と感じたことはなく、日々のチャレンジを楽しんでいます。起業するにあたって困難に向き合うことは当たり前だと覚悟をしていれば、苦労であると捉えることはありません。
ただ、会社員時代と比べて人との関わり方や責任の重さに大きな違いがあると感じました。私が前職で所属していた大企業では、一つの案件を通すのに社長決裁を仰ぐ必要があり、そこに大きな労力を割いていました。一方で、起業した今は、ひとりで決めてすぐに行動することができます。起業には「持久力」も必要ですが、特に大切なのは「瞬発力」です。エフエムたちかわにて、在宅医療についてのラジオ番組を発信しているのですが、これを始める判断は一瞬で行ないました。思い立った時にすぐ動ける力が、今の時代の起業家にとって不可欠だと感じます。
東京シニアビジネスグランプリに参加した感想を教えてください
会社を辞めてから起業するまでの間、自分のアイデンティティがないような感覚に陥っていました。しかし、書類選考や面接審査を通過したことで自分の存在意義を再認識し、モチベーションの維持や起業直後の孤独や不安解消の支えになりました。グランプリファイナルの舞台は本当に貴重な経験となりました。私はニュース番組のインタビューにも取り上げていただいたので、営業活動にも活用させていただきました。正直に言えば、最優秀賞が取れず残念でしたが、とても良い勉強をさせてもらいました。
今後の事業プランを教えてください
将来的に月商1億円規模のサービスを目指していますが、それ以上に、地域に根ざしたコミュニティを作ることを目標にしています。最終的な構想は、インターネットに依存しすぎない地域包括ケアの仕組みです。地域の人々が一体となって生活そのものを支えあう社会を作る一助となるようなサービスを構築し、人と人とのつながりが医療・介護・福祉を超えて広がっていくような未来を目指しています。
ここからは少し余談ですが、人生において楽しみや夢を持つことは本当に大切なことです。私はワインがとても好きで2年前に自分のワイナリーを作りたいと思い、長野県の小諸市に毎週通い勉強していました。ワイナリー作りの資金を稼ごうと考えたのが起業の原点の1つでもあります。起業を考えさせてくれたワインの写真は、私のWebサイトのブランディングページにも載せています。
会社HP:https://zaita9iryou.com